ことのはのもり

~ここは 心のさんぽみち~

【作品】だってラッテちゃんは、、

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たれ耳うさぎのラッテには、悩みがひとつあった。

それがこの世の終わりというほどの悩みでないことはわかっているし、お外には、もっと困っている人がたくさんいることも知っている。

ラッテには、やさしくお世話をしてくれる、あやちゃんとちーちゃんという飼い主のおねえちゃんがいて、お水やおいしいごはんを用意してくれたり、ボールで遊んでくれたり、寝る前に話しかけてなでなでしてくれたりする。

一度、ノラ猫が近づいてきたときなどは、一生懸命、お姉ちゃんたちが守ってくれた。

ラッテは、だれがみてもとても幸せそうな暮らしをしている。でも、、、

 

春の晴れた空を見上げながら、ラッテはいつものように、毛づくろいをはじめた。

おててをポンポンポンとあわせてぱふぱふにしてから、両手でお顔を丁寧につくろう。そうしてから、次は右のお耳を両手ではさもうとする。

 

するるっと耳がにげる。

 

反対のお耳も、両手ではさんでお手入れしようと思うのに、するりとぬけてしまう。

 

そう

ラッテの悩みはこれなのだ。ラッテのお耳はほかのうさぎ仲間とくらべて、とてもとても短い。

まだほんの赤ちゃんだったころの写真には、おもちゃの飛行機のはねのように、水平にお耳がでているラッテがうつっている。

大きくなって、少しはのびてきたけれども、ふつうの子の半分ほどの長さで、子犬のようにも見える。

見た目もはずかしいし、お手入れもしにくいいし、ラッテはどうにもこれがいやなのだ。

ときどき、しょんぼりとケージの隅っこに頭をくっつけて考えこんでしまう。

 

ある日、ラッテはいいことを思いついた。そしてあやちゃんとちーちゃんに、こう言った。

「あのね、僕のお耳を、頭の上でリボンのように結んでくれない?」

あやちゃんとちーちゃんはおどろいた。

「なんでそんなことがしたいの?」

「きゅっとむすんでくれて、それで一晩ねたら、お耳がのびるかもしれないでしょ。」

と、ラッテ。

おかしなことを言うねえ、と笑いながら、ふたりはなんとかリボン結びをしてあげた。ラッテはふたりにお礼を言って、いつものようにおやすみなさいのなでなでをしてもらった。

 

みなが寝しずまった夜。

ラッテは、とても困っていた。

お耳がぴんと上に引っ張られて、あっちをむいたりこっちをむいたりが、できない。

いつものように、ころんと横になって寝たいのに、それもできない。

 

前のおててをそろえてきちんと座り、窓の外のお月様をながめながら、一睡もせずに朝が来るのを待った。

 

次の日の朝、あやちゃんとちーちゃんは心配していつもより早く起きてきて、

「ラッテちゃん、どう?」

ときいた。

 

「おねがい、はやく、ぼくの耳をほどいて。」

ラッテは、眠たい目をこすりこすり、おねがいした。

ふたりはあわててほどいて耳を楽にしてあげた。

ホッとしたような、でも元気のなさそうなラッテに、ふたりはやさしく話しかけた。

 

「ラッテちゃん。ラッテちゃんは今のままでいいんだよ。お耳のみじかいの、かわいいよ。まんまるお顔にとっても似合っているもの。だから、長くのばそうなんて、思わなくていいんじゃないかな。」

 

「そうだよ。だってラッテちゃんはそのまんまが一番だもの、大好きだよ。」

 

ラッテはお姉ちゃんたちの声をききながら、気持ちよくなって、いつのまにか寝てしまっていた。

 

story by Nao♪

 

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