ことのはのもり

~ここは 心のさんぽみち~

【作品】「さくらちゃんとこうめちゃん」

今日もいいお天気。

 

 春の梅林のかたすみで、こうめちゃんはのびのびと手を広げてあくびをした。

大きなしあわせそうな、「あーあ」

こうめちゃんは歌うのが大好き。

まだすこしひんやりとした春の空に向かって自由にうたう。

 

梅林をふちどるように並んでいる桜並木の中で、さくらちゃんは軽やかにくるくるっと舞う。

ピンクのドレスを着て踊れる、春が一番好き。

風の音も音楽にきこえる。

 

すこし離れた竹林では、みたけちゃんが、今日もまっすぐに、ただまっすぐに、

上へ上へとのびていくようがんばっている。そんなみたけちゃんからみると、

こうめちゃんやさくらちゃんはいったい何をやっているの、となんだかムシャクシャしてくるようだ。

 

「ちょっとあなたたち、私たちを見習いなさいよ。そんなに無駄に手を広げたりうたったり、落ち着きなくおどったりして。もっと身体をぴしっとして、よけいな枝葉を落としてもらって、まっすぐのびなさいよ。私たちなんて、この竹林に無駄なスキマひとつないわよ。」

ある日、みたけちゃんがお説教をはじめた。

 

こうめちゃんとさくらちゃんはきょとんとして、みたけちゃんを見た。

「あらみたけちゃん。 いつもまーっすぐにお空に向かって伸びて、気持ちよさそうね。でも、こっちも楽しいものよ。いつか遊びにおいでよ。」

 

ケンカでもするつもりで身構えたていたみたけちゃんは、ちょっとお返事にまごついてしまった。

その夜、みたけちゃんは、こうめちゃんたちの言葉を思いだしていた。

ふうん、、

 

次の晴れの日に、なんとなくおさんぽにきたというふうに、みたけちゃんがふたりのところへやってきた。いつものように、自由に歌ったり踊ったり楽しそうにしているのを見ていると、みたけちゃんもなんだかつられて身体をゆらして、さわさわと音をたてはじめた。

いつのまにか、スズメやちょうちょもやってきて、ちょっとくすぐったい。

3人で笑いながら、うたったり踊ったりして午後いっぱいをすごした。

 

夕方、帰り道を歩きながら、みたけちゃんはひとりブツブツつぶやいていた。 

「うちはうちでいいけれど、、、みんな、それぞれなんだね。 またときどき遊びに行こう!」

今日のことを思い出し笑いしながら、足取り軽く、おうちに帰っていった。

 

 

story by Nao♪